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【緑の鼓動に耳をすませる】

2023年に公開されたアニメーション映画『かえるの歌』は、自然と人間の共生をテーマにした異色作だ。仮谷しんいち監督（『風の記憶』）が5年ぶりに手がけた本作は、蒼井里奈（声優初挑戦）と高橋竜之介（『星の音』）の演技がベルリン国際映画祭で特別提及賞を受賞。第78回毎日映画コンクールアニメーション部門優秀賞にも選ばれ、SNS上で「令和の風の谷のナウシカ」と話題を呼んでいる。

【沈黙の沼で始まる物語】

環境調査に失敗した女子大生・水野楓（蒼井里奈）が、足を負傷した奇妙なカエルと出会う場面から物語は動き出す。カエルを追って迷い込んだ湿原で、彼女は植物が光の波で会話し、カメラに映らない"透明人間"が暮らす異世界を発見する。やがて巨大ショッピングモール建設計画がこの土地を脅かすことを知り、楓はカエルと共に抗うことになる。

【キャラクターたちの多重奏】

楓の「人間らしさ」が逆説的に浮かび上がるのは、緑の精霊・トウヤ（高橋竜之介）との対比にある。建築作業車を自在に操る反面、虫の羽音に怯えるトウヤのキャラクター設定は、現代人の自然支配への痛烈な風刺だ。特に印象的なのは"透明人間"たちの存在で、監督インタビューで「忘れられた伝統的な自然観そのもの」と説明されたように、消えゆく民俗信仰のメタファーが随所に散りばめられている。

【SNSで響く共鳴】

「カエルの合唱シーンで涙が止まらなかった。スマホの通知音が急に煩わしくなった」（@mizuumi_25）
「CGと手描きの融合が革命的。特に雨粒の質感は本物の湿度まで伝わってくる」（@animator_kei）
「ラストの嬰児を抱くシーンで、母としての自分と地球への責任が重なって震えた」（@haru_mama）」

【音なき世界の福音】

本作最大の特徴はサウンドデザインにある。電子音と生楽器の不協和音が環境破壊を暗示する中、カエルの鳴き声だけが水晶のように澄み渡る。楓がトウヤに問いかける「人間は本当に進化したの？」という台詞は、AI時代を生きる私たちへの警鐘として胸に刺さる。エンディングで流れるカエルの大合唱は、実際に生物学者監修のもと20種類以上の鳴き声を重ねたというから驚きだ。

【再生へのリフレイン】

『かえるの歌』は単なる環境保護アニメを超え、声なきものへの共感力を問う寓話だ。鑑賞後、観客はきっと自宅の窓を開け、遠くの田んぼから聞こえるかすかな蛙鳴に耳を傾けるだろう。仮谷監督がインタビューで語った「声を失ったのは人間のほうだ」という言葉が、静かに心に沁みる作品である。

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